オーストラリアやニューヨークの飲食店で働くと、かなり早い段階で気づくことがあります。
それが、まな板の色分けが当たり前だということです。
肉は赤、魚は青、野菜は緑。
店によって多少違いはあっても、「食材ごとに使い分ける」という考え方はかなり浸透しています。
一方で、日本の飲食店ではどうか。
結論から言うと、日本は色分けが義務ではありません。
ただし、それは「衛生意識が低い」という意味ではなく、衛生管理の考え方そのものが違うという話です。
今回は、シェフとしての感覚も交えながら、日本・オーストラリア・ニューヨークの衛生管理の違いを整理してみます。
結論|日本は「色分けしないことがある」、でも衛生管理をしていないわけではない
まず結論です。
日本では、オーストラリアやNYのようにまな板の色分けが絶対標準とは限りません。
実際、個人店や昔ながらの現場では、同じまな板を使いながら運用でカバーしているケースもあります。
ただし、これは「適当」という話ではありません。
日本では昔から、
- 洗浄・消毒をしっかり行う
- 食材を切る順番を考える
- 職人や現場スタッフの判断で交差汚染を防ぐ
という、運用ベースの衛生管理が根付いてきました。
つまり、
- 海外は「ルールで事故を防ぐ」
- 日本は「現場の意識と運用で防ぐ」
という違いがあるわけです。
オーストラリアとNYでは、まな板の色分けがほぼ当たり前
オーストラリアやニューヨークの飲食店で働いたことがある人なら、これはかなり共感できると思います。
まな板を色で分けるのは、もはや特別なことではなく、現場の標準装備に近いです。
たとえば、
- 生肉用
- 魚介用
- 野菜用
- 調理済み食品用
のように分けることで、クロスコンタミネーション(交差汚染)を防ぐ考え方が徹底されています。
これは、誰かが優秀だから成り立つ仕組みではありません。
むしろ逆で、誰が入っても同じレベルの衛生管理ができるようにする仕組みです。
この発想は、日本の職人文化とはかなり違います。
日本は「色分け義務」よりも「結果として安全かどうか」が重視される
日本の現場は、色分けされていないからといって、すぐに危険というわけではありません。
実際には、
- 作業の前後でしっかり洗う
- アルコールや熱湯で消毒する
- 生ものの後にすぐ別の食材を切らない
- 包丁やまな板を複数持っていて、自然に使い分けている
といった運用で衛生を保っている店も多いです。
つまり日本では、
「色分けそのもの」よりも「交差汚染を起こさないこと」が本質として見られています。
ここが、海外との大きな違いです。
では、日本のやり方は遅れているのか?
私は、単純にそうとは思いません。
むしろ日本は、日本で別の形の衛生文化を育ててきました。
たとえば日本の現場には、
- こまめに掃除する習慣
- 汚れを嫌う感覚
- 食材を丁寧に扱う文化
- 現場の空気で衛生レベルを保つ意識
があります。
この「空気」とか「当たり前」の強さは、日本の飲食現場の大きな特徴です。
ただし問題は、その文化が人に依存しやすいことです。
優秀な人がいる現場はかなり綺麗に回ります。
でも逆に言えば、意識の低い人が入ると一気に崩れることもあります。
ここが、仕組み化された海外との違いです。
海外の衛生管理は「人を信用しすぎない仕組み」
オーストラリアやNYの現場で感じるのは、
「人を信用しすぎない設計」です。
- 色分けする
- ラベルを貼る
- 温度を記録する
- ルールを明確にする
- 監査やチェックを入れる
こうした仕組みがあることで、スタッフの経験値に差があっても、最低限のラインを保ちやすくなります。
特に多国籍な職場では、
- 言語が違う
- 経験年数が違う
- 衛生感覚の前提が違う
ということが普通に起こるので、
「見れば分かる」「ルール化されている」ことの価値がかなり大きいです。
色分けされたまな板は、その象徴のひとつだと思います。
日本の飲食店が色分けを徹底しない理由
これは「知らないから」ではなく、いくつか理由があります。
1. 昔ながらの運用で回ってきたから
長年、順番や洗浄で衛生を保ってきた現場では、あえて色分けを導入しなくても回ってしまうことがあります。
2. 厨房が狭い
日本の個人店は厨房スペースが限られていることも多く、まな板や器具を細かく分けるとオペレーションが煩雑になることがあります。
3. 職人文化が強い
「それくらい見て判断する」「洗えば分かる」という感覚がまだ強い現場もあります。
4. 制度より現場判断が優先されやすい
海外ほど“見えるルール”が絶対ではなく、店ごとのやり方に委ねられている部分があります。
それでも、今後は日本でも色分けはもっと広がると思う
私は、今後の日本では色分けやルール化はさらに進むと思っています。
理由は単純で、
- 人手不足
- 未経験者採用の増加
- 外国人スタッフの増加
- オペレーションの標準化需要
があるからです。
つまり、昔のように「分かる人がやればいい」では回らなくなってきています。
誰が入っても安全に回せる仕組みを作るには、
やはり色分け・マニュアル化・見える化は強いです。
そういう意味では、日本も少しずつ海外型に近づいていくかもしれません。
シェフとして思うこと|日本は“綺麗好き”、海外は“事故を防ぐ設計”が強い
このテーマを一言でまとめるなら、こうです。
日本は綺麗好き。海外は事故防止の設計が強い。
日本は、衛生感覚そのものが高い現場が多いです。
ただ、そのレベルは人に依存しやすい。
一方でオーストラリアやNYは、
人の能力差があっても一定水準を保てるように作られています。
どちらが上、どちらが下というより、
考え方の違いなんですよね。
でも、実際に海外で働くと、
「なるほど、だから色分けがここまで徹底されてるのか」と腑に落ちる場面はかなりあります。
まとめ
日本の飲食店では、まな板の色分けはオーストラリアやNYほど当たり前ではありません。
ただし、それは衛生管理をしていないからではなく、
衛生を保つためのアプローチが違うからです。
- 日本は運用と意識でカバーする文化
- オーストラリアやNYはルールと仕組みで防ぐ文化
海外経験があると、この違いはかなり面白く見えてきます。
もしこれから海外の飲食店で働く人がいるなら、
技術だけでなく、こうした衛生管理の考え方の違いも知っておくとかなり役立つはずです。










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