オーストラリアで永住権を目指す方法のひとつとして、「シェフ」は今でもよく候補に挙がる職種です。
実際、調理学校(クッカリー)に通い、現場で経験を積み、スポンサーにつなげる――という流れは一見わかりやすく見えます。
料理が好きな人や、すでに飲食経験がある人にとっては、「自分にも現実的なルートかもしれない」と感じやすいと思います。
私自身もオーストラリアで調理学校に通い、実際に現場で働いてきたので、その気持ちはよく分かります。
ただ、2026年時点であらためて冷静に見ると、永住権を狙う手段としてシェフを選ぶのは、誰にでもおすすめできるルートではありません。
少なくとも、私は安易におすすめできる道だとは思っていません。
むしろ、十分な戦略なしにこの道を選ぶと、かなりの確率で時間もお金も削られる職種だと感じています。
この記事では、実体験も踏まえながら、なぜ私が「永住権狙いならシェフはおすすめしない」と考えているのかを整理していきます。
結論|シェフは「戦略なしで選ぶと厳しい職種」
最初に結論から言うと、シェフという職種は、料理が好きという理由だけで選ぶには厳しすぎる仕事です。
もちろん、実際にこの仕事でキャリアを築いている人もいますし、スポンサーにつながっている人もいます。
事実、私のパートナーやその友人たちもシェフで永住権を取得している人が周りにはいます。
ただ、それは「シェフなら誰でも永住権を狙いやすい」という意味ではありません。
現場の労働環境、求められるスキル、雇用条件、スポンサーのハードル、そして都市ごとの格差。
これらを総合して考えると、シェフは「なんとなく選ぶ」にはリスクが大きい職種です。
特に、未経験から永住権だけを目的にこの道へ入る場合は、かなり慎重に考えた方がいいというのが私の結論です。
なぜシェフが永住権ルートとして人気なのか
それでも、シェフが永住権ルートとして人気になりやすい理由はあります。
ひとつは、日本人にとってイメージしやすい仕事だからです。
飲食業は日本人にも身近ですし、料理人という職業は、オフィスワークや専門職よりも「海外でも挑戦できそう」と感じやすい面があります。
また、クッカリーに通い、現場に入り、経験を積んでスポンサーにつなげる、という流れは、表面的にはかなり分かりやすいです。
語学学校や大学よりも、就職に直結しそうな印象を持つ人も多いと思います。
さらに、すでに日本で飲食経験がある人にとっては、「これまでの経験を活かせる」という魅力もあります。
そのため、オーストラリア移住や永住権の情報を調べていると、シェフは候補に入りやすい職種です。
ただ、問題はここからです。
“分かりやすく見えること”と、“実際におすすめできること”は別です。
理由① スポンサービザのハードルが思ったより高い
シェフで永住権を目指す話になると、「スポンサーしてくれる会社を見つければいい」と考える人は多いと思います。
でも、実際にはそこが一番簡単ではありません。
企業がスポンサービザを出すということは、会社側にもコストも手間もかかるということです。
つまり、雇う側からすると「誰でもいい」わけではなく、それだけの条件で雇う価値がある人材かどうかを見られます。
ここで問題になるのが、求められるレベルです。
スポンサー対象として考えられる給与帯になると、当然ながらその金額に見合う実力や責任も求められます。
単に「調理学校を出ました」「少し現場経験があります」だけでは届きにくい世界です。
実際には、そこまでのレベルに達していなくても、会社によってはスポンサーを前提に話が進むケースもあります。
ただ、それがそのまま「安定したキャリア」につながるとは限りません。
永住権ルートとしてシェフを考えるときにまず理解しておくべきなのは、
スポンサーは“優しい会社に出してもらうもの”ではなく、“会社がコストをかけても残したい人材”に対して出るものだということです。
理由② スポンサーされても安心ではない
仮にスポンサーしてもらえたとしても、それで全てが解決するわけではありません。
ここは意外と見落とされがちですが、スポンサーで雇われる人の給与や条件が、他のスタッフとのバランスを崩すことがあります。
同じ職場の中で、他の従業員がそこまでの給与をもらっていない場合、現場の空気が難しくなることもありえます。
会社側としても、本音ではギリギリのバランスで回しているケースがあります。
表向きにはスポンサーを出していても、現場ではその人に高い期待をかけ、少しでもズレがあると関係が苦しくなることもあります。
つまり、スポンサーはゴールではなく、むしろそこから先の方が長いです。
ビザがついたから安心、ではなく、その条件で働き続ける現実があります。
ここを理解せずに「スポンサーさえ取れれば何とかなる」と考えると、かなり危ないと思います。
理由③ 求人票や採用時の話と、現場の実態がズレることがある
もうひとつ厄介なのが、求人票や面接で聞いていた内容と、実際の現場での話がきれいに一致しないことがある点です。
これは飲食業に限らず起こりうることですが、特に現場と採用担当が分かれている場合、話がきちんと共有されていないケースがあります。
給与の水準、ポジションの認識、今後の見込みなど、入る前に聞いていた話と、現場責任者の理解がズレていることもあります。
求職者側からすると、「その条件だから受けたのに」という話でも、現場では「そんな前提は聞いていない」となる。
こういうズレは、入ってから大きなストレスになります。
しかも、トライアルや短時間の面接だけでは、その会社の内情までは見えません。
求人票に書かれている情報や、採用時の言葉だけを信じて入ってしまうと、あとから想像以上に苦しくなることがあります。
だからこそ、永住権狙いでシェフ職を考えるなら、
「採用されたかどうか」よりも「どんな条件で、どんな現場で働くのか」を重く見るべきだと思います。
理由④ 労働環境がかなりハードで、雇用条件も軽視できない
シェフという仕事そのものが、もともと体力的にも精神的にも楽な仕事ではありません。
忙しい時間帯は一気に集中しますし、立ち仕事ですし、プレッシャーも大きいです。
さらに問題なのは、店によって労働環境の差がかなり大きいことです。
休憩の取りやすさ、シフトの安定性、雇用形態、勤務時間の扱い。
こうしたものは、実際に生活していく上でかなり重要です。
特に、casualで時給ベースで生活する場合、full timeとは重みが全く違います。
少しのシフト変更や、条件の曖昧さが、そのまま生活の不安定さにつながります。
それなのに、「永住権のためだから」「今は我慢の時期だから」と考えてしまうと、かなり危険です。
我慢した先に必ず報われる保証があるわけではないからです。
シェフで永住権を狙うなら、仕事のきつさそのもの以上に、
どんな条件で働くのか、どんな雇用形態なのかを真剣に見ないといけません。
理由⑤ 都市によって条件がかなり違う
オーストラリアでシェフとして働くといっても、どの都市で働くかによって現実はかなり変わります。
私自身、シドニーとブリスベンの両方で働いた経験がありますが、給料感、チップ、生活コスト、交通事情、働きやすさなど、想像以上に差がありました。
例えば、同じポジションでも給与水準が違うことがありますし、チップの額もかなり変わります。
家賃の考え方、水道代の扱い、交通費、終電や終バスの時間なども、生活のしやすさに直結します。
つまり、「オーストラリアでシェフとして働く」という言葉だけでは、実態を語れません。
都市によって前提が違う以上、自分がどこでどう働くのかまで含めて考えないと、判断を誤りやすいです。
この点はかなり大事なので、シドニーとブリスベンの違いについては別記事で詳しくまとめる予定です。
それでもシェフを選ぶ価値がある人
ここまでかなり厳しめに書いてきましたが、シェフという道そのものを全否定したいわけではありません。
実際、この道に向いている人はいます。
例えば、すでに調理経験があり、一定のスピード感や現場感覚を持っている人。
英語で最低限のコミュニケーションができる人。
そして、数年単位でキャリアを積み上げる前提で動ける人です。
さらに、料理を「好きなこと」としてだけでなく、仕事として割り切って考えられる人も向いています。
収入、責任、職場環境、ビザの条件まで含めて、現実的に判断できる人であれば、シェフという職種を選ぶ意味はあります。
要するに、向いているのは
“なんとなく海外で料理がしたい人”ではなく、“現実を理解した上でこの仕事を続けられる人”です。
シェフをおすすめしない人
逆に、私が特におすすめしないのは、未経験からこのルートに入ろうとしている人です。
もちろん、未経験からでも挑戦はできます。
ただ、「料理が好き」「海外で暮らしてみたい」「永住権も狙えそう」という理由だけで飛び込むには、あまりにも不確定要素が多いです。
また、英語力や資金面の見通しが甘いまま始める人にもおすすめできません。
学費、生活費、仕事の不安定さ、キャリア形成の時間を考えると、かなり消耗しやすいからです。
さらに、永住権だけを目的にしている場合も危険です。
その目的自体は否定しませんが、シェフという職種は、ビザ目的だけで耐えられるほど軽い仕事ではありません。
もし自分がこのルートを考えているなら、一度立ち止まって、
「本当にこの職種で数年戦えるのか」
を冷静に考えた方がいいと思います。
結論|「料理が好き」と「永住権に向いている」は別問題
オーストラリアで永住権を目指すにあたって、シェフという職種が候補に上がる理由はよく分かります。
実際、外から見ると分かりやすく、現実的に見えるルートでもあります。
ただ、2026年時点で冷静に見れば、これは誰にでもすすめられる道ではありません。
スポンサーのハードル。
労働環境の厳しさ。
求人と実態のズレ。
都市ごとの格差。
こうした現実を踏まえると、「料理が好きだから」「シェフなら永住権を狙えそうだから」という理由だけで選ぶには、あまりにリスクが大きいと私は感じています。
大切なのは、感情だけで選ばないことです。
好きかどうかではなく、続けられるか。
憧れではなく、投資として成り立つか。
そこまで含めて考えないと、このルートはかなり厳しいと思います。
次に大事なのは、そもそも調理学校(クッカリー)に通う価値があるのかを冷静に考えることです。
次の記事では、私自身が通った経験も踏まえて、オーストラリアのクッカリーで学べること、学びにくいこと、そして途中で辞めた理由まで正直に整理します。










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